日本語で英語史を学ぶための文献・リソース

ゼミ授業

日本語で英語史を学ぶための文献やリソースを中心に紹介します。図書については、外大図書館の所蔵情報へのリンクを貼っていますので活用してください。随時更新しています。

はじめに

英語史は、内面史と外面史の2つからなります。

  • 内面史(internal history)は、言語としての英語の内部構造(例えば、発音や文法などの変化)の変化を扱います。
  • 外面史(external history)は、言語に影響を与えた社会的、文化的な要因(例えば、ノルマン征服など)を扱います。

ほとんどの英語史の入門書は内面史と外面史をバランス良く扱っていますが、本によってはどちらかに重きが置かれている場合もあります。

また、英語史の記述方法も大別すれば時代別テーマ別に分けることができます。

  1. 時代別に説明(古英語→中英語→近代英語→現代英語)
  2. トピックやテーマ別に説明(発音の変化、綴りの変化、語彙の変化、文法の変化など)

以下で紹介している本以外にも良い本はたくさんありますので外大図書館に足を運んで、本棚を眺めて、実際に手にとってみてください。まずは目次を見てみましょう。可能であれば、数冊を読み比べてみることをおすすめします。

英語史を学ぶ

まずはここから

寺澤盾(著)『英語の歴史 : 過去から未来への物語』(中央公論社、2008年)
・まずはこれを読んでみましょう。時代別に記述されており、英語史の全貌が掴めます。
・同著者による『英単語の世界 : 多義語と意味変化から見る』(中央公論新社、2016年)もおすすめです。

家入葉子(著)『ベーシック英語史』(ひつじ書房、2007年)
・どちらかというと内面史に重きつつバランスよく通史を概説しています。
・内面史については、トピック別にその変化について説明されています。
著者の家入葉子先生による紹介も参照してください(目次も掲載されています)。

宗宮喜代子(著)『歴史をたどれば英語がわかる : ノルマン征服からの復権と新生』(開拓社、2024年)
・現代英語との繋がりを意識した時代別の英語史です。

入門書

橋本功(著)『英語史入門』(慶応義塾大学出版会、2005年)
・時代別とテーマ別の複合的な記述がなされています。
・参照しやすい形で情報がまとめられています。
・英語の書体と聖書の英語について独立した章がある点が特徴的です。

松浪有(編)小川浩・小倉美知子・児馬修・浦田和幸・本名信行(著)『英語の歴史』(テイクオフ英語学シリーズ)(大修館書店、1995年)

唐澤一友(著)『世界の英語ができるまで』(亜紀書房、2016年)
・外面史と内面史のバランスが良く、古英語からWorld Englishまでを網羅した通史です。

堀田隆一(著)『はじめての英語史 : 英語の「なぜ?」に答える』(研究社、2016年)
・トピック別の疑問に対して英語史的な視点から説明されています。
・著者による連載記事「現代英語を英語史の視点から考える」も合わせて読むと理解がより深まります。

唐澤一友(著)『英語のルーツ』(春風社、2011年)
・英語が英語になるまで過程(印欧祖語、ゲルマン祖語からの発達)について詳しいです。
・隠れた良著だと思っています(現在は入手困難なのが非常に残念)。

寺澤盾(著)『聖書でたどる英語の歴史』(大修館書店、2013年)(購入依頼中)
・著者自身による紹介記事「UTokyo BiblioPlaza – 聖書でたどる英語の歴史」を参照してみてください。

H.ブラッドリ(著)寺澤芳雄(訳)『英語発達小史』(岩波書店、1982年)
・英語史の入門書として古典的名著です。
・原著はHenry Bradley, Making of English

メルヴィン・ブラッグ(著)三川基好(訳)『英語の冒険』(講談社、2008年)
・物語的に語られる英語史です。
・著者はBBC Radio 4のIn Our Timeで長年パーソナリティを務めたMelvyn Bragg氏(Baron Bragg)です。余力があれば原文の英語も味わってください。
Melvyn Bragg, The Adventure of English : 500 AD to 2000 : The Biography of a Language (Sceptre, 2003)

内面史を中心に

中尾俊夫・児馬修(編著)『歴史的にさぐる現代の英文法』(大修館書店、1990年)
・各文法事項がどのように発達してきたのか概観できます。

外面史を中心に

ジェリー・ノールズ(著)小野茂・小野恭子(訳)『文化史的にみた英語史』(開文社出版、1999年)
Gerry Knowles, A Cultural History of the English Language (Arnold, 1997) の訳書です。

武内信一(著)『英語文化史を知るための15章』(研究社、2009年)
・「英語史の重要テーマを15ほどピックアップして、社会文化史的な観点から解説した英語文化史の入門書」です(出版社の紹介文より)。

唐澤一友(著)『多民族の国イギリス : 4つの切り口から英国史を知る』(春風社、2008年)

柳朋宏(著)『英語の歴史をたどる旅』(風媒社、2019年)(現在購入依頼中)
【KOTOBA-カタリナ】ブログ(家入葉子先生)による紹介を参照してみてください。

標準化の視点から

高田博行・田中牧郎・堀田隆一(編著)『言語の標準化を考える : 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館書店、2022年)
・英語を含めた多言語の標準化について概観できます。英語の標準化については特に以下の2つの章を読みましょう。
・第6章 英語史における「標準化サイクル」(堀田隆一)
・第7章 英語標準化の諸相―― 20世紀以降を中心に(寺澤盾)

近年の研究動向について

家入葉子・堀田隆一(著)『文献学と英語史研究』(開拓社、2023年)
・入門書の域を超えるかもしれませんが、近年の研究動向を一望するための必読書です。

各時代の英語を学ぶ

古英語

近藤健二・藤原保明(著)『古英語の初歩』(英潮社、1993年)

市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩』(研究社出版、1986年)

上野義和(編)上埜謙一郎・中桐謙一郎・入学直哉・平井美津子 (著)『古英語の世界へ : モルドンの戦い』(松柏社、1997年)

長谷川寛(訳)『原典対照『ベーオウルフ』読解』(春風社、2010年)

寺澤盾(著)『聖書でたどる英語の歴史』(大修館書店、2013年)(購入依頼中)
・聖書を題材に各時代の英語を比較しながら学ぶことができます。

苅部恒徳・小山 良一(編著)『古英語叙事詩『ベーオウルフ』対訳版』(研究社、2007年)

中英語

水鳥喜喬・米倉綽(著)『中英語の初歩』(英潮社、1997年)

市河三喜・松浪有(著)『古英語・中英語初歩』 (研究社出版、1986年)

寺澤盾(著)『聖書でたどる英語の歴史』(大修館書店、2013年)(購入依頼中)

初期近代英語

寺澤盾(著)『聖書でたどる英語の歴史』(大修館書店、2013年)(購入依頼中)

特定の視点から学ぶ

標準化、対照言語史

高田博行・田中牧郎・堀田隆一(編著)『言語の標準化を考える : 日中英独仏「対照言語史」の試み』(大修館書店、2022年)
・英語を含めた多言語の標準化について概観できます。英語については特に以下の章を読みましょう。
・第1章 導入:標準語の形成史を対照するということ(高田博行・田中牧郎・堀田隆一)
・第2章 日中英独仏――各言語史の概略
・第6章 英語史における「標準化サイクル」(堀田隆一)
・第7章 英語標準化の諸相―― 20世紀以降を中心に(寺澤盾)

文法化、言語変化

保坂道雄(著)『文法化する英語』(開拓社、2014年)

Joan Bybee(著)小川芳樹 [ほか] (訳)『言語はどのように変化するのか』(開拓社、2019年)
Joan Bybee, Language Change (Cambridge University Press, 2015)
・言語変化の過程についての概説です。
・特に文法化(grammaticalization)については「第6章 文法化―その過程とメカニズム」を読みましょう。

歴史社会言語学

岩田祐子・重光由加・村田泰美(著)『社会言語学 : 基本からディスコース分析まで』(ひつじ書房、2022年)

高田博行・渋谷勝己・家入葉子(編著)『歴史社会言語学入門 : 社会から読み解くことばの移り変わり』(大修館書店、2015年)

歴史語用論

高田博行・小野寺典子・青木博史(編)『歴史語用論の方法』(ひつじ書房、2018年)

金水敏・高田博行・椎名美智(編)『歴史語用論の世界 : 文法化・待遇表現・発話行為』(ひつじ書房、2014年)

World English

大石晴美(編)『World Englishes入門 : グローバルな英語世界への招待』(昭和堂、2023年)
・世界のさまざまな地域変種について概説されています。
・英語圏地域以外の英語について知りたい場合はこの本を出発点にすると良いでしょう。

コーパス、データとしてのことば

実証的な英語史研究を行うためにはデータとしてのことばの扱い方も重要になってきます。

石川慎一郎(著)『ベーシックコーパス言語学』(ひつじ書房、2021年)
・本学で集中講義をご担当いただいている石川慎一郎先生によるコーパス言語学の入門書です。
・「神戸大学石川慎一郎研究室」内の「コーパス言語学」のページにも目を通してみましょう。

小林雄一郎(著)『ことばのデータサイエンス』(朝倉書店、2019年)

英語史研究者による文献案内やリソース

家入葉子先生(京都大学)による英語史全般の基本文献

堀田隆一先生(慶應義塾大学)によるhellog~英語史ブログの記事

三浦あゆみ先生(東京大学)によるA Gateway to Studying HEL文献案内

菊地翔太先生(専修大学)による英語史関連のリソース